「かぐや姫の物語」覚書

氏家さんは役員会でこう言ったという。職務執行は執行役員に任せているので俺が直接手を下す事業はない。ただ唯一例外がある、それが高畑作品だ。あらかじめ言っておくがこの作品は儲からない、ただ損をしてもいいからいい作品を作ってもらう。一度どうしてそこまで高畑さんにこだわるのか聞いたことがある。氏家さんは、俺はアイツに惚れている、あの男にはマルキストの香りが残っている、と答えてくれた。昨年の12月20日、3分の1程度まで出来上がった絵コンテを見せたらその場で時間をかけて読み込んだ。そして開口一番「かぐや姫ってわがままな娘だな」と感想を漏らした。俺はこういう娘が好きだ、それを高畑さんに伝えたら、僕がやろうとしているのはまさにそれ、現代の娘なんです、と喜んでいた。動くかぐや姫を見せてあげたかった。ジブリ作品ではこの間製作はスタジオジブリとし製作責任者の名前はクレジットしてこなかった。しかしこのかぐや姫完成の暁には、製作責任者 氏家齊一郎と表記したいと考えている。 (2011年5月17日 鈴木敏夫のジブリ汗まみれ「氏家さんのこと」より)

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